劣化するからこそ、尊くて美しい
今日は、少しマニアックな話になります。
僕はギタリストなので、ギターやアンプのことは割と詳しい方だと思います🎸
そして、ここ10年くらいで、ギターアンプの世界は本当に大きく変わりました。
特にデジタルアンプの進化はすごいです🚀
Kemper、Fractal Audio、を代表するアンプシミュレーター、プロファイリングと言う技術。
簡単に言うと、今の時代はひとつの機材の中にいろんなアンプの音を入れることができます。
しかも音がめちゃくちゃ良い。
ライブハウスでも安定して音を出せる。
真空管のように劣化することも基本的にはない。
すごい時代です✨
でも僕は、今もアナログな真空管アンプを使っています。
真空管アンプという、劣化していく楽器
僕が使っているアンプの中には、真空管という電球みたいなものが入っています。
電源を入れると真空管が温まって、音を作って、増幅してくれる。
小さな真空管で音色を作り、大きな真空管で音量を増幅する。
ざっくり言うと、そういう古い仕組みのアンプです。
今のデジタルアンプと比べると、全くもって効率は良くありません。
しかも真空管は使えば使うほど劣化していきます。
電球がだんだん暗くなって、最後には切れてしまうように、真空管も少しずつ音が変わっていきます。
音が痩せたり、張りがなくなったり、最後には音が出なくなることもある。
全くもって便利ではないです。
でも、僕はそこに魅力を感じています。
劣化するからこそ、その日の音がある。
使うたびに少しずつ変わっていくからこそ、耳を澄ませたくなる。
今日の音は、今日しか出ない。
この真空管の状態、このアンプの状態、この会場、この自分の状態。
全部が重なって、その日の音になる。
それが、僕にはすごく尊く感じます。
デジタルの便利さと、アナログの美しさ
デジタルアンプは本当にすごいです。
どこのライブハウスに行っても、かなり近い音を再現できる。
ラインで直接出せるので、マイクでキャビネットを拾う必要もない。
アンプやスピーカーやマイクの状態に左右されにくい。
合理的で、安定していて、現代的です。
それは本当に素晴らしいことで、否定する気持ちは全くありません。
スタジオの機材や練習環境としても、今後そういうものがもっと増えていくのは自然なことだと思います。
でも、僕自身が表現者としてステージに立つ時は、やっぱりアナログなものに惹かれます。
ギターをシールドでアンプにつなぐ。
真空管で音を作る。
キャビネットから音を出す。
その音をマイクで拾って、ライブハウスのスピーカーから鳴らす。
何度も空気を通って、何度も少しずつ変化して、客席に届く。
その不安定さも含めて、僕は好きなんです。
ギターも、人間と同じように変わっていく
ギターも同じです。
基本的に木でできているので、少しずつ変化していきます。
弦も、スチールなので使えば錆びていく。
ピックアップも、長い時間の中で状態が変わっていく。
大事に使っていけば、ギターはヴィンテージになっていく。
それは単なる劣化なのか、成長なのか、育っているのか。
感じ方は人それぞれです。
でも僕は、ギターは育っていくものだと思っています。
人間や植物と同じように、時間を重ねて、最後は少しずつ枯れていく。
その枯れていく感じも含めて、音に歴史が宿っていく。
僕はそこに惹かれます。
最近はスマートギターのようなものもあります。
樹脂や金属で作られていて、ほとんど劣化しない。
チューニングも安定している。
中にアンプシミュレーターが入っていて、つなげば自分の決めた音をすぐに出せる。
それも本当にすごいです。
でも僕は、木のギターを弾いていたい。
アナログなエフェクターを踏んでいたい。
ライブを重ねるごとに弦が劣化していく、その感じも含めて音楽をしていたい。
僕がアナログな機材を使う理由
僕は、デジタル系のエフェクターも使いません。
アナログディレイを使ったり、こだわりの部品で作られたブースターを使ったり、昔からある王道のフェイザーを使ったりしています。
マイクも、いろいろ試した結果、昔自分が愛用していたAUDIX OM5に戻りました。
ギターの弦も、コーティング弦ではなく、普通のスチール弦を使っています。
ライブを1本、2本やれば、弦の音は変わります。
劣化しすぎたら、1本のライブでも交換します。
それでも僕は、その非効率なやり方でいきたいと思っています。
なぜかと言うと、僕にとって音は、完全に固定されたものではないからです。
その日のコンディション。
その日の機材の状態。
その日の空気。
その日の自分。
それらが重なって、その日しか出せない音になる。
僕はそこに、ライブの魅力を感じています。
人間も、劣化していくから美しい
これは機材だけの話ではありません。
人間も同じだと思っています。
年を重ねると、白髪が増えたり、髪が細くなったり、顔にシワができたり、体力が落ちたりします。
体も変わっていきます。
でも僕は、それがとても尊くて美しいものだと感じています。
もちろん、人前に出る以上、清潔感は大事にします。
髪も整えるし、自分の好きなファッションも楽しみたい。
ちゃんと身だしなみは整えます。
でも、無理に若作りをしたいわけではありません。
白髪が生えたなら、それも今の自分。
シワが増えたなら、それも今の自分。
時間を重ねた姿そのものに、その瞬間の魅力があると思っています。
僕は昔からアメカジのようなカジュアルな服装が好きです。
高級ブランドにあまり興味があるわけではなく、自分が好きな服をずっと着ていたい。
年齢を重ねても、スカジャンを着たり、ネルシャツを着たり、ジーンズを履いたりする。
若く見せたいというより、今の自分として好きなものをちゃんと楽しんでいたい。
否定ではなく、自分の美学として
誤解されたくないのですが、デジタル機材を否定しているわけではありません。
KemperもFractalも、スマートギターも、コーティング弦も、便利で素晴らしいものです。
それを選ぶ人の美学もあります。
美容整形やプチ整形も同じです。
それによって救われる人もいるし、自分を好きになれる人もいる。
それはその人にとって、とても大切な選択です。
僕は、それを否定したいわけではありません。
ただ、僕自身の美学としては、劣化していくものに惹かれます。
限りあるもの。
変わっていくもの。
いつか壊れるもの。
いつか枯れていくもの。
そこに、ものすごく人間らしい美しさを感じます。
劣化するから、遠くて美しい
劣化するからこそ、今日の音に耳を澄ませる。
劣化するからこそ、今の姿を大事にする。
劣化するからこそ、その瞬間が尊くなる。
デジタルに映し出された花よりも、少しの期間だけ咲く花だからこそまじまじと見てしまいます。
真空管アンプも、木のギターも、スチール弦も、人間の体も、声も、見た目も、すべて時間の中にあります。
昨日と同じようで、少し違う。
明日には、また少し変わっている。
だからこそ、今しかない。
その今しかないものを鳴らすのが、僕にとってのライブです。
技術がどれだけ進化しても、便利なものがどれだけ増えても、僕はその瞬間にしか出せない音や声や姿を大事にしたい。
劣化していくもの。
変化していくもの。
限りあるもの。
そこにこそ、僕は芸術を感じます。
そして、そこにこそ、生きている美しさがあると思っています。

